Loading...

〇〇ママの好きなこと・大切なこと

2023.09.05
〇〇ママの好きなこと・大切なこと

産後ケアホテルで育児スタートの準備を

産後ケアホテルCocokara 高橋奈美さん、荒木美里さん
Twitter
Facebook
LINE

出産がママの体にもたらすダメージは「交通事故並み」だと言われています。また心理的にも負担が大きく、10人に1人が産後うつを発症するというデータも...。そんなママ達に心身共に癒やしの時間を与えるのが「産後ケアホテル」ですが、道内にはまだ1件もありません。北海道初の開業に向けて奔走している「産後ケアホテル Cocokara」代表の高橋奈美さん(@nami.no.insta 以下、奈美さん)と副代表の荒木美里さん(@mw_misato_cocokara 以下、美里さん)にお話を伺いました。

Contents

  1. ワンオペ育児の限界の日々で出会った希望。
  2. 活動のために自らも努力。ミスコン北海道グランプリ。
  3. 産後ケアホテルを「贅沢」ではなく、当たり前の存在に。

ワンオペ育児の限界の日々で出会った希望。

まずは奈美さんから、自己紹介をお願いします。

奈美さん:札幌で生まれ育ち、中学校は吹奏楽に、高校ではダンスに打ち込んでいました。人に何かを教えることが好きだと気付いて、北海学園大学在学中に塾講師のアルバイトをはじめ、卒業後はそのまま就職しました。その後、結婚・出産を経て、現在は1歳9ヶ月の長女を育児しながら産後ケアホテル開業に向け活動をしています。

mamasuki_takahashisama_01.jpg

奈美さんは中学の吹奏楽では後輩を指導したり、高校のダンス部では自らダンス教室に通って技を身に付け、講師役も勤めたりと、昔から率先して行動に出るタイプだったそう。

「産後ケアホテル」をつくろうと思ったきっかけは?

奈美さん:夫が自営業で全国を飛び回っている影響から、出産後すぐからワンオペ育児に追われたんです。寝不足で食べる暇もなく、体力もなく、逃げたくて仕方がありませんでした。気付けば真冬のベランダに裸足で立っていたことも...。そんな心身ともに限界の生活を送っていたある日、ネットで産後ケアホテルのことを知ったんです。

でも、北海道には一軒も無い...

奈美さん:そう知ってガッカリしました。でも「無いなら私が作らなきゃ」という使命感につき動かされて。調べたところ産後うつにかかるママは10人に1人、さらに産後1年未満の女性の死因第一位が自殺だということが分かったんです。この悲しい現実を変えたいと、すぐにインスタで発信をスタート。産後から4、5ヶ月頃だったかと思います。

そこに連絡したのが美里さんだとか。

美里さん:私は看護学校を卒業してから16年間、総合病院で助産師をしていました。その間、双子姉妹と長男の3児の出産・育児を経て「もっと産後ケアに力を入れたい」と思うようになったんです。けど勤め先は組織が大きい分、自分では変えられない面がどうしてもあって。そんな時に奈美さんの投稿を見つけたんです。

「これだ」と。

奈美さん:現役の助産師なんてとっても心強い存在。それからすぐに会って、ね。初対面で意気投合したんです。
美里さん:わざわざスライドを作ってプレゼンしてくれてね(笑)。すごい行動力と熱意だなって。彼女の想いに背中を押される形で、長年勤めた病院を退職しました。現在はフリーランスの助産師としても活動しています。

mamasuki_takahashisama_02.jpg

美里さんは10歳双子女子と7歳男子の3児のママ。助産師として産前・産後ケアにも多く携わってきたプロですが、自身の子育てでは思い悩むことも多かったそうです。

改めて、産後ケアホテルとは何か教えてください

奈美さん:産後のママの心と身体を休め、癒やしを得るための場所です。子どもは隣室に宿泊する助産師や保育士に預け、ホテルならではのホスピタリティを受けながら家族が安心して子育てをするためのサポートを得ます。韓国や台湾などアジア圏では普及していますが、日本ではまだあまり浸透していない、知名度すら低いのが現状です。

欧米よりもアジアが多いんですね

美里さん:欧米ではその代わり、ベビーシッターを雇う文化がありますからね。韓国では結婚資金を貯めるのと同じように、若い頃から産後ケアのために貯金する習慣があるんです。
奈美さん:日本だけが地域で子育てをしていた時代の、古い社会モデルのまま今に至ってしまっている。だからたくさんのママが孤独を抱えてしまうんです。

なるほど。どのように活動をはじめましたか?

奈美さん:はじめはまず調査から。実際に運営しているホテルを調べたり、認可等のハードルを知った上で、インスタ上で「産後ケアホテル、あるなら欲しい?」というアンケートも取りました。約300人中の95%が「欲しい」と回答があって、やっぱり必要なものだと実感したんです。

奈美さんのinstagramより。ご自身の赤裸々な体験談や、ケアホテル開業への思いを投稿しています。

美里さんもケアホテルの現状について発信。助産師の経験を生かした子育てのアドバイスも投稿しています。

活動のために自らも努力。ミスコン北海道グランプリ。

奈美さんは今年3月「BEST OF MISS北海道2023 Mrs. SDGs JAPAN」でもグランプリに輝いたのだとか。

奈美さん:インスタで発信を続けていたところ、運営の方からお誘いを受けたんです。主催は「ミスユニバースジャパン」で知られる「ベストオブミス」。出場したら確実な知名度につながります。審査に受かるだけでもハードルが高いし、レッスンが大変なことも分かっていたけど迷わず出場を決めました。

出場するためにレッスンがあるんですか?

奈美さん:出場希望者は「ビューティキャンプ」という毎週土日9時間のレッスンがあります。スタイルを維持するための筋力トレーニング、立ち方やキャットウォーク、それからスピーチの練習...。体力的にも辛いですし、ストレートに「このままじゃダメ」と注意されることも多くて...。毎週発表されるランキングでいきなり最下位をとった時もショックでした。よく、美里さんに弱音を吐いてましたね。

mamasuki_takahashisama_03.jpg

大会での高橋奈美さん。ミセスSDGsジャパンは「女性の力でSDGsを拡め、より早い目標達成を目指す」を掲げ、輝く女性を応援している(ご提供写真)

子育てとの両立も大変。

奈美さん:一番心配だったのは娘のこと。実はそれまで、「自分が見なきゃ」という責任感から人に預けていませんでしたが、レッスンを機に預けることにしたんです。はじめは罪悪感に襲われて、迎えにいくたびに涙しました。でも預ける習慣ができたおかげで、結果的に楽になれたし、レッスンにも集中し自分に向き合えたと実感しています。

グランプリを取った時の気持ちは?

奈美さん:嬉しいというより、ホッとしたというのが一番の心境。それまで「絶対にグランプリを取ります」と告知して、応援してくれている方々もたくさんいたので、ようやく良い報告ができるなって。
美里さん:私はゼッタイに受かると信じてました。特に根拠があった訳ではありませんが、この子はやると言ったらやる子だと、信じ切っていたので(笑)

mamasuki_takahashisama_04.jpg

とっても心強い(笑)。取得後の変化は?

奈美さん:イベント等に呼ばれる機会が増えましたし、何より自信につながりました。次は11月には東京で全国大会が行われるので、それも絶対受かるぞという気持ちで引き続きトレーニングに励んでいます。
美里さん:私はその間、彼女に代わってCocokaraの活動を頑張る予定です。

産後ケアホテルを「贅沢」ではなく、当たり前の存在に。

どんな産後ケアホテルを目指していますか?

奈美さん:まずは、家族みんなで泊まれることが前提。これはパパの育児参加を根付かせるという意味もあります。次に助産師さんや保育士さんが常駐して、赤ちゃんだけでなく上の子も預けられたり、産後マッサージやよもぎ蒸しなど心身共に癒やされるサービスを受けられたりするといいなと思います。
美里さん:実は「ママの心が満たされないと育児に気持ちが向かない」というのは、助産師学校で最初に習うほど基本的なことなんです。ママ一人ひとりに応じた細かなサービスで満足して欲しいですね。

最終的にはホテルそのものを建てる?

奈美さん:そうです...が、もちろんただの主婦だった私にホテルを建てるお金はありません。まずは提携してくれる宿泊施設が2、3箇所あればいいなと思います。実は11月から、札幌駅北口近くのゲストハウス「Ten to Ten Sapporo Station」にご協力いただき、で試験的にサービスを開始する予定なんです。

mamasuki_takahashisama_05.jpg

今後、どんな課題がありますか?

奈美さん:まずはコストがハードルですね。助産師や保育士等を用意したり、マッサージやエステも利用できるように...とすると必然的に利用料金が上がってしまいます。私たちは産後ケアを「贅沢」ではなく誰もが利用できる場所にし、つらい時に何度でも戻ってこれる、心の拠り所となれればいいなと考えています。

市の助成が貰えるなど、公的な援助が受けられると良いですよね

美里さん:現状は産後ケアホテルそのものの認知が足りていないので、全国的にも助成制度がありません。一方で「産後ケア」だけに限定して言えば、京都市では産後1年まで産後ショートステイやデイケアを受けられる事業を行っています。
奈美さん:札幌市でも同様の事業がありますが、産後6ヶ月以内で利用できる施設も少ないため、申し込みした人の半数が受けられていないのが現状です。まずは産後ケアの存在や必要性そのものを訴えていかなければなりません。

まだまだ課題が山積みなようですが、お2人の姿勢はとても前向きですね。

奈美さん:6月から毎月「0歳児ママ会」を開催して、リアルなママ達の声も聞いています。改めて育児の辛さを思い出し、同じ思いをするママを一人でも増やしたくないという気持ちがモチベーションにつながっています。

mamasuki_takahashisama_06.jpg

「0歳児ママ会」はbyme(記事はコチラ)を会場に開催。オーナーの水野さんは奈美さんの大学時代の後輩なのだとか。(ご提供写真)

美里さん:私も病院で産後うつに近いママ達を多く見て「もっとケアをしたい」というもどかしい思いを抱えていました。Cocokaraとして活動し始めても、ママ達からのたくさんの「つらい」という声が届くようになって。子どもを残して世を去るなんて最も悲しいこと。やっぱり私もママ達を救いたいというのが一番の原動力です。
奈美さん:もちろん、応援の声もたくさんの方々から頂いています。道のりは遠いですが、行動すれば必ず叶うと信じて、これからも進んでいきます。

ありがとうございました!

mamasuki_takahashisama_07.jpg

産後ケアホテルCocokara

高橋奈美さん、荒木美里さん

高橋奈美さん instagram:@nami.no.insta
荒木美里さん instagram:@mw_misato_cocokara

Twitter
Facebook
LINE