クラシックと「おしゃべり」で、豊かな人生を届けたい!
音楽団体「music in art」代表で、札幌市南区でピアノ教室を営む小野寺あいさんは、活動や仕事のかたわら2児の子育てにも奔走中のママ。クラシック音楽を身近に感じてもらうため精力的に活動をされていますが、その原動力となっているのは子育て経験なのだそう。ご自宅を訪ね、活動にかける想いや子育ての苦労について伺いました。
Contents
- ハンガリーで学んだ、音楽への向き合い方
- 妊娠中に開いたコンサートが大きな転機に
- 満足に子育てをしていたら、活動はしていなかった
ハンガリーで学んだ、音楽への向き合い方
まずは「music in art」のご活動についてお聞かせください
「音楽はあらゆる芸術と深くつながっている」というコンセプトのもと、演奏を披露する前に「おしゃべり」の時間を設け、楽曲や作曲家が生まれた背景にある文化や、その時代の芸術全般を紹介しているのが特徴です。またカフェや教会で、子どもや赤ちゃん連れでも参加できる会も開いています。
いつ頃から音楽にかかわってきたのでしょうか
母のもとで4歳からピアノのレッスンを受け、小学校からピアノの先生について習っていました。練習が大っ嫌いな子どもだったんですが、高校生の頃に与えられた課題曲に感動して、それからは音楽の道に進もうと決意したんです。
留学の経験もお持ちだそうですね
先生から勧められたのをきっかけに高校卒業後、ハンガリーの首都・ブダペストにある国立リスト音楽院へ留学しました。普段の生活では英語すらも通じない国で、レッスンも「30曲を次回までに覚えてきて」という厳しいものでしたね。
大変そうですね...
でもハンガリーでは幅広い芸術にふれることが、音楽家にとって必要だと学びました。学生は美術館やコンサートには格安、時には無料で入れましたので、さまざまな芸術や文化、歴史にふれることができました。家庭の都合で予定より早く帰国してしまいましたが、当時の経験が現在の「music in art」の原点になっています。
音楽家としての活動は帰国後から?
帰国後は大手音楽教室でピアノ講師をしながらアルバイトをかけ持ちして、そのお金を注いで仲間たちとコンサートを自主開催してきました。でも現在の活動につながる大きな転機は、31歳で長男を妊娠したことですね。
妊娠中に開いたコンサートが大きな転機に
詳しく教えてください
妊娠初期からつわりがひどくて、思うように動けない状況が続いて。楽器店のピアノ講師は移動も多く、夜も遅くなることがあり、そのまま働き続けるのは難しかったんですね。そこで夫と相談して、一軒家を購入して自分のペースで開講できる教室を自宅で開くことにしたんです。
その状況でもピアノを続けていたのでしょうか
厳しかったですね、座っていても息切れしてしまう状況で...。さらに「産後はもっと弾けなくなるかも」という不安でもいっぱいでしたので、とにかく必死にしがみついて練習する日々でした。練習曲を短く難易度の低いものにして、自分に与える課題のハードルを下げたんです。
「music in art」も妊娠中に開催されたそうですね
実は安定期に入ってから開催したコンサートが第1回。演奏だけでなく歴史や同時代の美術などとつながり音楽の紹介といった「おしゃべり」を取り入れてみたら、とっても手応えがあったんですね。
そうだったんですか!
クラシックのコンサートって演奏だけを披露するものが多くて、一方の見方からするとトークは"邪道"なんです。妊娠中だからこそ踏ん切りが付いて、この方法に挑戦できたのだと思います。
満足に子育てをしていたら、活動はしていなかった
ご出産されてからは?
生まれてからも大変。長男は起きていても泣いてばかり、寝ても数時間で目覚める子でしたし、夫が仕事で多忙なため一人で育児することも多かったんです。1年後には次男を妊娠したので、もうノンストップで育児を続けるしかなくて。現在長男が4歳、次男が3歳ですが、肩の力が抜けてきたのはごく最近ですね。
やはり、音楽が拠り所だったのでしょうか
産後すぐからベビーベッドをピアノの横に置いて、ひらすら練習していましたからね(笑)。やっぱり「できない」ことへの悔しさが原動力になっていたんだと思います。
逆境に燃えるタイプなんですね
幼い頃から「やめたほうがいい」って言われると悔しくて「やってやる!」って燃え上がるんですよ。同様に「music in art」も、妊娠、育児、コロナ禍という大きな逆境があったからこそ頑張れた。きっと満足に子育てができていたら、やっていなかったでしょうね。
育児で心がけていることは?
人に頼ること、自分1人で頑張りすぎないことです。私は育児も仕事も活動も、周囲に頼りたくないという気持ちがあったんですが、次男の産後に過労で倒れてしまったんですよね。否が応でも周囲に頼らざるを得ない状況になってはじめて、その執着心が無くなって。
強制的に立ち止まって、はじめて気付いたんですね
心や身体が元気じゃないと何も活動できませんからね。音楽だけやっていても人生が豊かにならないのと同じで、1つのことに執着するのは良くありません。だからママとしてではなくて、自分の時間もきちんと大切にして、子育ての時間を豊かにして欲しいなと思います。
ありがとうございました!
ピアニスト・音楽団体「music in art」代表
小野寺 あいさん
小野寺あいピアノ教室 instagram:@aionodera.piano
「music in art」instagram:@music_in.art